前立腺という臓器は男性特有の臓器でなじみが薄いかも知れませんが、現在の超高齢社会では「前立腺肥大症」や「前立腺がん」という病気が急増しています。
たとえば前立腺肥大症は排尿障害の原因にもなるため、生活の質(QOL)を低下させます。また、前立腺がんは進行すれば致命的になるので早期発見が重要です。
一方、前立腺の病気は必ずしも高齢男性に限られたものではなく、青年男性にもみられます。この場合は主に「前立腺炎」という病気が多く、性感染症の合併や不規則な生活習慣やストレスの多い現在社会を反映して増加傾向にあります。
高齢者はもちろんのこと、若い方でも排尿に関する異常を感じたら、前立腺の病気を疑ってみることが重要です。
前立腺は男性の骨盤内にある臓器で、膀胱に近い尿道を取り囲んでおり、後方は直腸に接し、肛門から指を入れると直腸壁を通して容易に触れることができます。大きさと形は栗の形に似ています。
前立腺から分泌される前立腺液は射精の際に放出される精液の20%前後を占めており、精子の運動と栄養補給に役立っています。前立腺は子孫繁栄のために非常な大切な臓器といえます。
前立腺は思春期を境に急激に大きくなり、45歳ぐらいまでほぼ横ばいの状態が続きます。ここまでは誰にも見られる傾向ですが、その後の変化は個人によって異なり、萎縮(いしゅく)と肥大(ひだい)のいずれかの方向に進みます。
肥大の場合には60歳代になるまでに急激に大きくなります。前立腺が年齢とともに肥大する原因には、前立腺内の男性ホルモンの増加や成長因子の作用等が考えられています。
さらに最近では生活習慣病(糖尿病・高血圧・肥満など)との関連が注目されています。
排尿の悩みの原因として高齢男性の場合、最も多いのが前立腺肥大症です。これは前立腺の良性腫瘍であって生命に関わることはありませんが、高齢化とともに患者数も増加しています。
前立腺が大きくなったり、前立腺の筋肉が過剰に縮まって尿道が圧迫されることで、尿の通りが悪くなるため、「おしっこの出が悪い」といった症状が現れます。
尿の出が悪い状態を解消しようと膀胱が過敏になったり、完全に尿を出し切れなくなることで、「昼も夜もトイレが近い(頻尿)」「おしっこが残っている感じがする(残尿感)」といった様々な症状が現れます。
60歳の男性の半数以上は前立腺が肥大しており、その内の4人に1人は前立腺肥大症の症状が出ていると言われています。
前立腺の肥大には食生活の欧米化や男性ホルモンが関係していると言われていますが、詳細はまだわかっていません。前立腺が大きくなるほど症状が重くなるかというとそうではありません。前立腺が大きくても症状がまったくなかったり、逆にそれほど大きくなくても重い症状が出るなど、人によって様々です。
これまで高齢者の排尿障害は「年のせいだ」とがまんする傾向にありましたが、最近では病気と認識され、さらに生活の質(QOL)を低下させることから、早期に治療を受けることが望ましく、治療により多くの患者さんが 快適な生活を取り戻しています。
診断・検査
・問診 どのような症状がどの程度あるのかを伺います。国際前立腺スコア(IPSS)とQOLスコアという質問票(排尿チェックシート)で、どのような治療を行うのかの決定や治療の効果を調べます。
・血液検査 腎臓の働きや、前立腺がんがないか調べます。
・尿検査 尿に血が混じっていないか、細菌はいないかなど前立腺肥大症と症状が似ている病気の有無を調べます。
・尿流量測定 尿の勢い、排尿量、排尿時間などを測定します。
・超音波検査 前立腺の大きさや膀胱に残っている尿の量を調べます。
治療
前立腺肥大症の治療には薬による治療と手術による治療があります。重症例以外の多くは薬により症状を抑えられる可能性が高いので、最初に薬による治療を行います。
また治療を行っている間は定期的に症状の確認を行いますが、前立腺がんの発生を確かめるために血清PSA値の測定を6~12ヵ月ごとに行うことが必要です。
薬による治療で効果が出ない場合や症状が重い場合には、尿道から内視鏡を入れて電気メスで前立腺を切除する手術などを行います。
前立腺肥大症は、日常生活を少し工夫するだけで、症状をある程度軽くすることができます。日頃からおしっこの状態を悪化させない生活習慣を心がけましょう。
前立腺がんは高齢になり発生する代表的な男性特有のがんであり、わが国における前立腺がん患者数は、近年になり急速に増加しています。
その最大の要因は高齢化ですが、それ以外にも生活習慣の欧米化が考えられます。特に脂肪分の多い食事が前立腺がんの増加に密接に関係していると言われています。また、男性ホルモンの作用が前立腺がんの増殖にかかわっていると言われています。
主に前立腺の外側に生じ、症状は進行するまでみられないことが多く、はじめのうちは尿のトラブルが起こりにくいのが特徴です。
一方、前立腺肥大症は前立腺の内側が肥大しますが、前立腺肥大が前立腺がんになることはありません。(ただし、前立腺がんと前立腺肥大症が同時に存在することはあります。)
血液検査(PSA検査)により、前立腺がんの可能性を調べることができます。
診断・検査
・スクリーニング検査 前立腺がんの可能性がある方を見つけるための検査です。①血液検査(PSA検査)②直腸内触診③画像検査(超音波検査・前立腺MRI検査)
・前立腺針生検 超音波を用いて前立腺の位置を見定め、直腸より穿刺針を進め、前立腺の組織を一部採取して前立腺がん細胞の存在を確認します。
・画像検査 CT・MRIで前立腺の周囲のリンパ節や臓器への転移、また肺や肝臓などの遠隔臓器への転移を調べます。
治療
前立腺がんには「手術療法」「放射線療法」「ホルモン療法(内分泌療法)」など、様々な治療法があります。これらの治療を単独もしくは組み合わせて行います。
治療法は、がんの進行度や悪性度または患者さんの全身状態、年齢などを考えて、最適な治療法を選択することになります。
前立腺炎とは、男性の尿道のまわりにある組織が何らかの原因で炎症を起こす病気です。前立腺炎は、急性のものか慢性のものか、細菌感染によるものか非細菌性によるものかで分けられます。
尿道を取り囲む組織に炎症が及ぶため、炎症による激しい痛みだけでなく、尿に関わるさまざまな症状(頻尿・尿意切迫・尿勢低下・残尿感など)が生じることがあります。
好発年齢は20~40歳代になります。
診断・検査
・問診 前立腺診察 問診と前立腺の触診察(直腸診)を行います。前立腺の圧痛と炎症によるむくみや硬さを確認します。
・尿検査
・画像検査 超音波検査 CT検査
治療
前立腺炎の治療は、原因により異なります。
細菌性の場合、原因菌に効く抗生物質を投与しながら全身状態を改善させます。非細菌性の場合、神経刺激療法や抗不安薬、前立腺マッサージなどいろいろな治療を行います。
そのほか、症状を和らげるための鎮痛薬や尿を出しやすくするための薬を用いたり、温熱療法などの治療を行ったりすることもあります。
ただ、一旦慢性化するとなかなか治りにくく、長期の治療になることもめずらしくありません。服薬とともに日常生活の改善(十分な睡眠・アルコールや刺激の強い香辛料を控える・入浴で体を十分に温めるなど)も大切です。